ソーマ

  • この極めて重要な魔術的儀式の中で唱えるソーマとは一体であるか?


研究者の多くは 長きに渡り「ソーマ」を宇宙樹として考えてきた。またシャーマンの樹であるカバノキから圧搾された飲み物だとも考えていた。シベリアの神話の中で広く伝播している民間伝承によるとカバノキの精は女盛りの女性で信奉者の願いに応じ 時折樹木の根の間や幹から姿を現す。髪を解き上半身だけ見せて 両手を差し伸べると信放者を真顔で見つめ むき出しの乳房を差し出す。その乳を飲んだものは自分の力がみるみる倍増するのを感じる。



ソーマは、またヴェーダの祭式では重要な供物とされてきた。「その味は神すらも溺れさせる」と言われるこの飲み物は ある種の興奮剤の役割を果たしていた。古代バラモン教の儀式の際にも供物として或いは 僧たちの飲み物として用いられた。ソーマは山地で採取されるある樹種の樹皮であり それを石で叩き、圧搾して樹液を絞り出す。これに牛乳や水を加え醗酵をさせた飲み物がソーマとされている。「ソーマ草」は、つる草の一種 或いは、シロバナサルコステンマだという説もあるが、いまだに解明されていない。またソーマは、その実態がつかめぬままに神として崇められるようになる。神ソーマと月はしばしば同一視される。これは月がソーマを注ぐ器であり月の満ち欠けは、器の中のソーマの量と考えられたからである。


しかしその後「ソーマは種から生じたものではない」とサンスクリット語の古文書に具体的な説明が発見された。古文書によると ソーマの描写がベニテングダケに酷似していた。このキノコは聖なる乳の滴に濡れた乳房に喩えられ笠に散らばる白いうろこ状の斑点がその所以である。この白いうろこ状の斑点は ムスカリンを含み幻覚などの障害を引き起こす。

ベニテングダケ


高山地帯の白樺林に良くはえる。
傘の直径10〜20cmく らい、茎の高さ10〜25cm。
傘は赤く、表面に白いいぼが付着している。
有名な毒茸 で、誤飲すると下痢、嘔吐、視力障害、痙攣などおこす。
このキノコは 古代シャーマニズムの儀式においてシャーマンが
トランス状態に入る際摂取した。
ある種の樹木の根に菌根として生える。
このキノコが、好んで繁殖する樹木は カバノキ 次にモミである。
摂取から一時間ほどで患者の身体に震えが襲う。
その後著しい興奮状態が起きる。
催淫作用によって、踊り狂う 声を上げて笑う、或いは怒りをあらわにする。
次に視覚障害が起き 物の輪郭がぼやけ歪んで見える。
患者が蒼白になり始めると 極度の麻痺状態に陥り全く身動きしなくなる。
数時間後運良く意識を取り戻した場合 その間に起きた出来事発作の
記憶が途切れている。
死亡例が多く報告されている。

ソーマの神格化

リグ・ヴェーダ』末期になると、ソーマは神格化され、チャンドラ(月)の神となる。神話によると、チャンドラには27人の妻がいた。しかし、彼はたった一人の妻だけを溺愛する。27人の妻はみな姉妹で その父ダグジャに不公平を訴える。腹を立てたダクシャは、ソーマに呪いをかける。チャンドラは、その呪いによって一ヶ月の半分を 無力で脱力状態が続く。つまり月の欠けていく様である。
また ソーマは、植物を支配する神とも同一視された。『ヴィシュヌ・プラーナ』によれば、ある時、彼はラージャスーヤの祭祀で、与えられた強靭な力に酔いしれ慢心の挙句欲望に駆られるまま、神々の指導者ブリハスパティの妻ターラーを誘惑した。ターラーとソーマは不倫関係に陥る。それを知ったブリハスパティは、怒りに震え妻ターラーを見限り追い出してしまう。その後ターラーの妊娠が発覚する。ターラーは人知れず こっそりと子供を産み落とすのだが その子は 優れた知性と類稀なる美貌を兼ね備えていた。風の噂にその子供の話を耳にしたブリハスパティは 自分の子だと主張する。ターラーは 口を閉ざしていたがブリハスパティとソーマの間で戦争に発展しそうな気配にようやく神々の前で告白をする。「この子は ソーマ様のお子でございます。」 こうして神ソーマの聡明な子は クシュリナの家系の始祖となり インドを長く支配した。 

ちなみに最近流行のカラーセラピーオーラソーマ」との関係は つかめませんでした。