シャンバラ 後編

シャンバラ 後編

ロシアの画家で詩人で哲学者でもある ニコライ・レーリッヒは
1925年から4年間中央アジアの探検に費やした。
その甲斐があり彼は様々な不思議な体験をした。


ある日の事 レーリッヒの一行は ヒマラヤ山脈の狭い道を
奥へ奥へと進んでいた。すると前方から妙な集団がやってくる。
一行は車を止めじっくりと観察をする。
灰色の服を着た4人の男がカゴを担いでいる。
レーリッヒは そのときの模様をこう語っている。
カゴの中には 赤と黄色の法衣(ほうえ)をまとっ僧侶の
姿が見えた。私は 体に電流が走った。カゴの中にいる僧侶は
この世のものとは思えぬ高貴さが漂っていた。


レーリッヒは 町に戻るとこの出来事を土地のラマ僧に伝えた。
しかし ラマ僧は レーリッヒを疑う。
ラマ僧曰く 法衣の色は ダライ・ラマのような高位の僧侶にしか
まとう事を許されない衣だという。
カゴについても 最高位の僧侶の遺体を運ぶ時にだけ
使われるものだと聞かされ レーリッヒは唖然とした。
戸惑ったレーリッヒをみながら ラマ僧がつぶやく。
「もし それが本当なら 貴方はシャンバラの僧を見たのかもしれない。」


レーリッヒは シャンバラに到達したとは公言していない。
しかし彼の妻へレナの証言が残っている。
ある年 砂漠を探索中 レーリッヒだけが忽然と消えたことがある。
何処からともなく芳しい「お香」の匂いが漂いポーターの一人が騒ぎ出した。
「この先は 禁足の地である。人間は誰も踏み込んではいけない。」
仕方なく野営を決めたが その夜、レーリッヒが姿を消した。
周囲は 彼の安否を心配したが見る限り砂また砂の砂漠地帯。
どうする事も出来ない。主を失った一行は まんじりともせず一晩明かす。
ところが あくる日の昼近くになり レーリッヒは ひょっこりと戻ってくる。


ポーターの一人がレーリッヒに向かってこう言う。
「貴方は神である。シャンバラの禁足の聖地の境界を越えたからだ。」
しかしレーリッヒは 誰に聞かれてもこの一晩の間に起こった事は
決して誰にも告げず終焉を迎えた。


理想郷シャンバラ

インド密教の最後の教典 "時輪(カーラチャクラ)タントラ"の記述によれば
シャンバラは 7つの大陸囲まれた南の中央大陸に位置し
更に6つの地域に分かれたなかの北から二つ目がシャンバラであり
巨大山脈の内側には 中央部と それを取り囲む
8枚の花びらのように町が形成され中央部分の首都のカラーパは
純金と宝石で築かれ まばゆいばかりだ。
シャンバラ王は 100年間ずつこの国を統治し国には飢えや病気とも無く
常に平和である。シャンバラの住人は 毎日の修行で悟りを開き
聖人としてシャンバラ王から叡智を受ける事が出来 長寿を得る事が出来る。


シャンバラとは 険しい地形のどこかにその入り口を開く。
この理想郷に足を踏み入れる事の出来るものは選ばれたものである。
シャンバラは 映画「ビレッジ」を想起させます。
彼らは この世の全ての汚れたものから身を守るため理想郷を築いた。
でも ヴレッジ大どんでん返しのラストにもあるように
理想郷と呼ばれる場所が不完全な人間にとっていかに窮屈な場所か?
私は シャンバラへの片道切符を手にしても きっといかないだろうな。

ヴィレッジ [DVD]

ヴィレッジ [DVD]

チャンチャン。