アグリッパ AGRIPPA

mminazuki2005-06-08

アグリッパ AGRIPPA 
(1486〜1535)
アグリッパが古今の哲学書、宗教書、オカルト文献を博捜し東西の魔術思想をまとめ上げたのが「オカルト哲学」三部作である。アグリッパの基本思想となるものは、三層の世界であった。

  • 元素的世界
  • 天界的世界
  • 叡知的世界
全ての下位の世界は上位の世界によって支配されながら影響を受けている。その始原にある万物の創造主は 天使 天空 星辰 元素 動物 金属 石塊を介し その能力を我々の元に伝える。彼がそれらを創り給うのは そのためであろう。それ故に賢人たちは 我々がまさにそこから万物が発する始原の世界へと万物創造主にして第一原因へと それぞれの世界を通り上昇し より優れた事物に既に備わっているところの力を享受するのみならず 上位の世界からまた新たな力を引き出すことも可能である。月下すべての事物は生成と消滅に支配されていれど天上世界においても同様の事物が存在しうる。天上世界にあっては 天上世界の在り方、叡智界にあっては それより更に完全で良い在り方で また元型的世界に在っては 最も完全なる姿で存在する。この序列において全て下位のものに対応しそして上位のものを通してその至上の存在に対応し天界からは、第五元素、或いは宇宙の精気と呼ばれるものを そして叡智界からは 全ての質を超越した霊的で精気を与える力を 元型的世界(始源)の世界からは、その段階に応じてあらゆる完全性の元となる力を受け取る。故に全ての事物は この下位のものから星辰へ 星辰から叡智へ ついで叡智からまさに第一原因そのものへと しかるべき転移されるのである 全ての魔術とオカルト哲学は あげてこの序列と秩序から派生する。
  • アグリッパに拠れば『魔術はこの三つの原理的働きを包摂し一つに統合し作動させるものである、故にいにしえの人々は魔術を最高にして最も神聖な哲学として重んじた。』と述べる。アグリッパ三部作は 第一部に自然魔術 第二部第三部は数学的魔術 ダイモン魔術中心であった。その第一部自然魔術によると 全ての物質的物体の原基としての4元素 【火 水 土 空気】が存在し下位の物体は全てそれから合成される。4元素は、感性的質の基体であるが重要なことは自然界の持つ性質が これに尽くされていないということである。
磁石には鉄をひきつける力が備わっていて ダイアモンドはそれが存在することによって 磁石の力を奪い取ることは良く知られている。そしてまた琥珀や黒玉は、擦られ暖められると麦藁を引き寄せ 石綿はひとたび火をつけられたならば ほぼ消えることはない。
  • その他の記述として石榴石は暗闇で発光するし藍玉は止血作用をもたらす。或いはダイオウが胆汁を放出されるなどが挙げられ更には焼いたカメレオンの肝臓がもたらす作用に雷雨など それぞれの事物に作用と効能が書き連ねてあったが これらの特異な性質や作用には、4元素に基体化された温・冷・乾・湿の組み合わせから生じるものではなく「隠れた性質」とされる。
事物には 毒を吐き出す、鉱物から有害な蒸気を追い出す 鉄やその他のものを引き寄せるなど いづれかの元素から生じたものとは異なる力が備わっていて たとえその量(力)が極僅かであっても多大な効果を引き起こすのでいずれかの元素とは 認められない。というのも多くの形相と僅かな質料を有する これらの力は多くのことをなしうるが元素の力はより質料的であるため その作用は多くの質料を要するからである。これら性質は隠れた性質と呼ばれている。 と云うのは その原因が隠されたもので人間の知恵では到底 その原因に辿り着けず その原因を見出すことは叶わないからである。
天の霊魂が粗大な物体に付与され それに驚くべき能力を授ける際の媒質としてこの種の精気が必要とされる。 この精気とは、すなわち4元素に由来するものではなく4元素とは別に4元素のその上にその存在を有しているが故に第五元素と呼ばれる。この精気は我々人間の精気が我々の体の内部にあるのと同様に世界(宇宙)の身体の内にある。つまり霊魂の力が精気によって身体各部に伝えられるように 世界霊魂の力も第五元素のより万物に行き渡らせる。かくして 全ての隠れた性質は、この精気により太陽や月や惑星 或いは惑星より上位にある恒星を経由して 植物 石塊 金属 動物に与えられたのだ。
  • この「隠れた性質」は地上的元素に由来するものではないので 万物第一原因の「神」から発し「宇宙の精気」 換言すれば「第五番目の元素」を媒介して地上の物体に授けられたものだと考えまた魔術思想にとって「自然」は象徴と隠喩の巨大な集積であり 自然界の事物すべて人間の眼には見えない隠された意味を持ち 暗号台帳に記載されていると述べている。しかしながら アグリッパの功績は「オカルト哲学」の理論的な側面よりも 諸事物の性質として東西世界の古代 中世をとおしての二千年に渡る個々の言い伝えや 書き残されたものを徹底して調べ上げ 余すことなく書き残したことだ。

磁力と重力の発見〈2〉ルネサンス

磁力と重力の発見〈2〉ルネサンス

以前私のHPに書いたアグリッパの生涯です。