錬金術 Alchemy

mminazuki2006-09-28

『アブタラ・ジャライン』(エジプト語錬金術書)

ありきたりの雨水を充分に 少なくとも10クォートとって 
それをガラス容器に 少なくとも10日間密封しておきなさい。
そうすると容器の底に沈殿物やカスがたまる。
きれいになった水を容器から取って それをボールのような
木の容器に入れなさい。
そして その容器を半分に切って そこに三分の一ほど
その水を入れるのです。そして日中、人目につかない場所で
日向にさらしておきなさい。

これが終わると 聖なる赤ぶどう酒を一滴 その水に落としなさい。
するとたちまち その水の上に霧が立ちこめ真っ暗になります。
それは、万物想像の最初の情景のようです。

それから二滴入れてみなさい。闇の中から光が差してきます
そこで7分半毎に少しずつ、最初は三滴 次に四滴、5滴、六滴と
ぶどう酒を落としなさい。

それ以上は、必要ありません。
水の表面に次々とあるものが一つずつ現れるのが目で見られます。

これが神が六日間で万物を造ったのと同じ情景なのです。
このようにして万物想像が成されたのです。
大きな声で言う事ができず 私もまた明かす力も無い秘密というのは
こう言うことなのです。

こうした作業をする前に まず跪きなさい。
自分の目でたしかめなさい。
これが この世界が創造された情景だからです。
そして こうした情景をそのままにしておきなさい。
30分もしたら皆消えてしまいます。

こうして神の秘密をはっきり見る事ができるのです。
それは今、大人にも子供にも隠されていることなのです。

モーセが、万物創造に関して書いた事が 何であったか
今や はっきりと理解する事が出来るでしょう。
そしてアダムとイヴが追放の前後 どういう様子をしていたか
ヘビが何者であったか
どういう木の実を二人が食べたかが わかるでしょう。

また楽園とは、どこにあって どういうところか
正しき者たちは、どういう肉体に生まれ変わるのか
そしてその肉体が アダムからもらった この肉体ではなく
『聖霊』によって得られる肉体 つまり『救世主』が
神の国から持ってきた肉体である事がわかるでしょう。


アラビア語錬金術は、「エジプトのもの」と言う意味であった。Al-Khemeiaは、エジプトの古代の名前 Khemennu(月の国)に由来する。ユダヤ女マリアは、最初の錬金術師であったと言われた。彼女は、カリフの統治時代 アルコールを蒸留する方法を発明し二重鍋も発明した。フランスでは、今でもその鍋を「マリヤの湯槽と呼んでいる。1575年、ブラウンシュワイク公ユリウスは、一人の女錬金術師を鉄の椅子に座らせ火炙りにした。何故ならその女性が卑金属から金を作り出す方法を教えなかったからである。


神秘主義の体系としての錬金術は、性的シンボルに満ちている。錬金術の過程にしばしば現れる「結婚」・「交合」 あるいは、性的描写の図は、錬金術を面白いものにしていく。錬金術判事絵は、よくある両性具有のイメージで 男性と女性の諸力が統一されているものであった。月と太陽は 裸の男性と女性の姿で表され 月は、その夫に「おお太陽よ、雌鶏がいなければ雄鶏が何も出来ないのと同じように おまえさんも 私の力がなければ 一人では何も出来ません。」といった。


錬金術師たちは 女性の聖なる力「知恵」(Sapientia)、あるいは、グノーシス派の太母である ソフィア(Sophia)を求めた。「哲学の水銀」(ウォレンテーヌス)では、ソフィアは、冠をかぶり その乳房からは、血と乳がほとばしる魚の尾を持ったアフロディテとなっている。こうした姿は、ヒンドゥー教の世界の母 聖母マーヤ(MAYA)を真似たものである。


錬金術師たちは アフロディテを「哲学者のセイレン」と呼ぶ。彼女は、深海のMariaから生まれ その乳首から血と乳を流している。イタリアの写本をみると あごひげを生やした二人の哲人が、アフロディテの乳房をむさぼるように吸っている。それは乳(ちち)の白と血(ち)の赤に象徴されている秘密を 吸い取ろうとしているのである。同じ赤と白が「錬金術師たちの花」にも現れた。赤と白が混じった五弁のバラは、それを「栄光ある子供を生む子宮」と呼んだ。また聖母マリアを象徴するバラもこれと同様だった。


マリア・ソフィアは グノーシス主義錬金術の女神であった。賢者の石は、時に詭弁学派の石とも呼ばれ 錬金術書では、隠れた女神は知恵の母と呼ばれ 聖母マリアの諸要素と異教の母のイメージを併合したものと言われていた。


古代、太母が「聖なる容器」として表されたため 多くの錬金術書には 明らかに性を寓意すると思われるものがみられた。たとえば、ある書(哲学的不安)には、次のような一節がある。

その白い木を持ってきて 円形の暗い露に囲まれている家を建てなさい。
そしてその家に100歳の男を入れて 風も埃も入らないように閉めておきなさい。
そして八日間 放っておきなさい。
そうするとその木の実を食べ続けて若者になるのです。
なんとすばらしいことでしょう。
ここで父親がむすこになり 生まれ変わるのです。

再生の神秘について同じように寓意的に述べることは 中国の錬金術士たちにとっては 当たり前の事だった。彼らは 液体にした金を飲み長寿を得る事ができると語った。それは 金を作る過程でできる真っ赤な地獄の火の成分によるのであり その成分は、男性と女性の精髄を表すものなのである。といった。

私は、精をだして畑に種子を蒔かねばならない。
その畑の中には、霊妙なる胚がある。
それから咲く花は、黄金のような色で芽は大きくないが
種子は円形で傷の無い宝玉のようである。
其れが成長するには、中心地の土のお蔭であるが
高い山から 水をひかねばならない。
9年(9ヶ月)間栽培すると根と枝が上級なる聖霊の天界へ
達するのである。

聖職者は、錬金術で用いるこれらの言葉が理解できず この「悪魔の術」に携わる者たちを放置していた。しかし公に『化学』に反対が表明されたため多くの優れた人々は、この錬金術と言う「化学」から離れてゆく。教会が、錬金術に反対し 黒魔術と同一視した理由は、聖書や牧師が与える以上に神の啓示を簡単に実現できることにあり 教会を脅かす存在となったからであった。錬金術の作業は、実に秘密に満ちていた。


ユングは、何故 こうした化学的過程が神話上のシンボリズムの茂みに隠されたのかを「自然科学は、教会によって異端と断ぜられ 直後異端審問が盛んに行われた時代、自然科学に手を出す人は、殆ど迫害に遭う、自身を守る方法として寓意をつかい また神学上の原理が在れば それら寓意の中に隠匿する事が出来たからだ。」と語る。錬金術の文献に見られる豊富な性的シンボルを解明すれば その秘密は、いつか解明されるであろう。

記号・図説 錬金術事典

記号・図説 錬金術事典

錬金術の歴史―近代化学の起源 (科学史ライブラリー)

錬金術の歴史―近代化学の起源 (科学史ライブラリー)



カリフ:マホメットの後継者の意で回教国教主としてのトルコ国王の称号